AI開発の鍵はモデル選定にある。コスト削減と品質向上を実現する使い分け戦略

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

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AI開発の鍵はモデル選定にある。コスト削減と品質向上を実現する使い分け戦略

Claude CodeCursorを使って開発を進める中で、モデル選定の重要性をますます実感しています。

今年の5月から本格的にAI開発を始めて、いろいろなサービスやクライアントワークを進めてきました。その中で「とにかく最新モデルを使えばいい」というわけではなく、モデルや実装内容・規模ごとに開発の進め方を変えることが重要だなと感じています。

今回は、実際に使い分けている具体的なノウハウを共有していきます。

なぜモデルの使い分けが必要なのか

AI開発が当たり前になった今、「どのモデルを使うか」という選択が成果を大きく左右するようになってきました。

以前は「とりあえずChatGPT」「とりあえずClaude」という選び方でも良かったかもしれません。でも今は、モデルごとの特性を理解して使い分けないと、コストがかさむだけでなく、アウトプットの質も上がらないという状況になっています。

開発効率とコストの最適化

高性能なモデルをすべてのタスクに使えば品質は担保できるかもしれませんが、コストが膨らみます。

例えば、Opus 4.5は非常に優秀ですが、シンプルなコード生成や定型的な処理にまでOpusを使うのはオーバースペックです。そういった場面ではSonnetで十分ですし、コストも大幅に抑えられます。

逆に、複雑なアーキテクチャ設計やリファクタリングでSonnetを使うと、何度もやり直しが発生して結局時間もコストもかかる、ということになりがちです。

💡 ポイント

タスクの複雑さに応じてモデルを使い分けることで、コストを抑えながら品質を維持できる。これがAI開発時代の基本戦略です。

アウトプット品質の最大化

モデルごとに得意・不得意があります。これを無視して「いつも同じモデル」で進めると、本来出せるはずの品質が出せないまま終わってしまいます。

例えば、論理的な整合性が重要な設計ドキュメントと、読みやすさが重要なブログ記事では、最適なモデルが違います。この違いを理解して使い分けるだけで、アウトプットの質は確実に上がります。

また、モデルとタスクのミスマッチを避けることで、手戻りや修正の回数も減ります。結果として、開発全体の効率も上がるわけです。

AI開発のマネジメントの鍵、AIモデル選定

今後の開発は、モデルや実装内容・規模ごとのマネジメント開発の進め方が重要になってくるなと感じています。

最新モデルを使えばいいわけではない

Claude CodeCursorが出てきて、とにかく最新のモデルを使うという開発の進め方があります。

でも、モデルによってはやはりまだまだ違いがあるし、コストもそれによって変わってきます。単純に「最新だから良い」というわけではなく、用途に応じた選択が必要だなと思っています。

実際、最新のOpus 4.5を使うとコストが跳ね上がる場面もあります。逆に、Sonnetで十分な場面でOpusを使うのは明らかにオーバースペックです。

モデルごとの特性を理解する

モデルにはそれぞれ得意・不得意があります。これを理解した上で使い分けることが、AI開発のマネジメントにおいて非常に重要になってきます。

チーム開発の記事でも触れましたが、AIツールを効果的に使うには、その特性を把握することが前提になります。

たとえば、同じ「コード生成」というタスクでも、アルゴリズムの設計とUIの実装では最適なモデルが違ってきます。

テキスト生成におけるモデル選定

まずテキスト生成の例で、モデルごとの違いを説明していきます。

Gemini 3 Proの特徴と向き不向き

Gemini 3 Proはサーチの能力が強かったり、かなり論理的で間違いのない回答をしてくれます。

ただ、例えばテキストの長文日本語の文章を作ってもらうと、かなり硬い文章になってくるので、AI判定に引っかかりやすくなったりします。

AIっぽいテキスト・文章にしたくないのであれば、Gemini 3 Proはあまり向いていません。

逆に言えば、硬めのテキスト、論文、契約書などであれば向いているので、この辺は「テキストだからこれ」というわけではなく、それぞれの文脈に合わせた選択が必須だなと思っています。

📝 Gemini 3 Proの強み

  • 検索・リサーチ能力が非常に高い
  • 論理的で事実に基づいた回答が得意
  • 技術ドキュメントや仕様書の作成に最適
  • 複雑な条件分岐を含むロジックの設計

Claude Opus 4.5・Sonnetの特徴

Claude Opus 4.5やSonnetの方が精度が高くて、日本語の文脈を理解した上で読みやすいテキストを作ってくれるという特徴があります。

普通に読むテキスト、ブログ記事、マーケティングコンテンツなど、自然な日本語が求められる場面ではClaudeの方が向いています。

また、Claudeは「空気を読む」のが上手い印象があります。曖昧な指示でも意図を汲み取って対応してくれることが多いです。

💬 Claude Opus 4.5・Sonnetの強み

  • 自然な日本語の文章生成が得意
  • 文脈理解力が高く、ニュアンスを汲み取る
  • クリエイティブなコンテンツ制作に最適
  • 曖昧な指示でも意図を理解して対応

用途に合わせた選択が必須

まとめると、こんな感じで使い分けています:

Gemini 3 Proが向いている用途

  • 論文・学術的な文章
  • 契約書・法務関連
  • 技術ドキュメント
  • 論理的な分析レポート
  • ファクトチェックが重要な場面

Claude Opus 4.5・Sonnetが向いている用途

  • ブログ記事・コンテンツ
  • マーケティング文章
  • ユーザー向けの説明文
  • 自然な会話調のテキスト
  • クリエイティブなライティング

開発プロセスでのモデル使い分け

これは文章作成・テキストの例ではありますが、開発においても同じことが言えます。

プランニングフェーズ:論理性重視

プランニングは論理的で間違いのないものにしたいので、Gemini 3 Proで実装ドキュメントや要件定義などを実装するようにしています。

AI時代の開発効率フレームワークで書いた「評価・ルール・結果」の初期設計においても、論理的な整合性が重要なので、ここはGeminiが強いなと感じています。

プランニングフェーズでGemini 3 Proを使う理由

  • 要件の抜け漏れを論理的に検出できる
  • 技術的な制約を正確に把握
  • 整合性のある設計ドキュメントを生成
  • リサーチ能力を活かした技術選定

実装フェーズ:柔軟性重視

それ以降の実装のプロセスに関しては、Opus 4.5を使うなどして、要件を考えながらパターンを考慮して実装してもらうということがやりやすいなと思っています。

Claudeは文脈を理解した上で柔軟に対応してくれるので、実装フェーズでの試行錯誤には向いています。

特に、既存のコードベースに追加する形の開発では、Claudeの方がコードのスタイルを合わせてくれることが多い印象です。

実装フェーズでClaude Opus 4.5を使う理由

  • 既存コードのスタイルに合わせた実装
  • 試行錯誤しながらの柔軟な開発
  • エッジケースへの対応力
  • リファクタリング時の文脈理解

フェーズ切り替えの具体例

実際の開発では、こんな流れで使い分けています:

  1. 要件整理(Gemini 3 Pro):ユーザーストーリーから技術要件を抽出
  2. 設計ドキュメント作成(Gemini 3 Pro):API設計、DB設計を論理的に整理
  3. 実装(Claude Opus 4.5):設計に基づいてコードを生成
  4. コードレビュー(Claude Opus 4.5):ルール・ドメイン知識に基づいた自動レビュー
  5. テスト作成(Claude Sonnet):コードの文脈を理解したテストケース生成
  6. テスト実施・修正(Claude Sonnet):テスト実行と失敗時の修正対応
  7. ドキュメント更新(Claude Sonnet):実装に合わせた自然な説明文
  8. 最終レビュー(Gemini 3 Pro):論理的な整合性と抜け漏れの最終チェック

ドキュメント・ナレッジ管理がコアノウハウ

これは単純に良いモデルの話だけであって、例えば実装内容や規模が変わってくるときには、どのドキュメントやナレッジをどのように読ませて、その結果、プランニングをさせて実装に進むという形になると思います。

全部読ませると厄介になる問題

ドキュメントを全部読ませると厄介になることが多いです。

コンテキストウィンドウの問題もありますし、情報が多すぎると逆に精度が下がることもあります。

特に、関係ない情報が混ざっていると、モデルがそれに引きずられて変な方向に行くことがあります。

⚠️ ドキュメント過多の問題

  • コンテキストウィンドウの消費が激しい
  • 関係ない情報に引きずられる
  • 処理時間とコストの増加
  • 逆に精度が下がるケースも

ドキュメントの圧縮とリライト

そこで、ドキュメントの圧縮の方法やリライトの方法、残し方みたいなところがかなりコアなノウハウになってくるのではないかと思っています。

例えば、その辺を意識して開発しない限りはなかなか良い出力が出ないので、質の良いインプットをすることによって、質の良いアウトプットが出るようになってきます。

ドキュメント管理の実践テクニック

  • 階層化:概要 → 詳細の順で読ませる
  • タスク特化:今のタスクに関連する部分だけ抽出
  • 要約レイヤー:詳細ドキュメントの要約版を用意
  • 更新履歴:最新の変更点だけ伝える場合も

質の良いインプットが質の良いアウトプットを生む

結局のところ、「質の良いインプット → 質の良いアウトプット」という原則は変わりません。

そこに良いモデルがかかるという形になってきます。モデル選定とインプットの質、両方が揃って初めて良い結果が得られるわけです。

質の良いインプット × 適切なモデル選定 = 質の良いアウトプット

コストパフォーマンスの最適化

モデル選定で忘れてはいけないのがコストの話です。

モデルごとのコスト意識

Opus 4.5は確かに高性能ですが、その分コストも高いです。すべてのタスクでOpusを使うと、月額のAPI費用がかなりの額になります。

逆に、Sonnetで十分なタスクも多いです。特に、定型的な処理やシンプルなコード生成はSonnetで問題ありません。

コスト最適化の考え方

タスク種別 推奨モデル 理由
アーキテクチャ設計 Opus 4.5 複雑な判断が必要
機能実装 Sonnet / Opus 複雑さに応じて選択
テスト作成 Sonnet パターン化しやすい
リファクタリング Opus 4.5 文脈理解が重要
ドキュメント作成 Sonnet 十分な品質が得られる

あらゆる領域での活用

開発だけでなく要件定義・コンサルティングも

クライアント案件や自社の開発など、開発だけじゃなくて要件定義、コンサルティングもやっているので、その中でのマーケティングやプロダクトマネジメント周りなど、あらゆるところで今活用しています。

CAIOサービスでも、経営層向けにAI戦略の策定から実装まで支援していますが、その中でもモデル選定の知見は重要な要素になっています。

例えば、クライアント企業のAI導入戦略を策定する際には、以下のようなプロセスでモデルを使い分けています:

コンサルティングプロセスでのモデル使い分け

  1. 現状分析・課題抽出(Gemini 3 Pro):企業の現状データやヒアリング内容を論理的に分析し、課題を構造化。ファクトベースで正確な分析が重要なのでGeminiが最適。
  2. 戦略策定・ロードマップ作成(Gemini 3 Pro):AI導入戦略や優先順位付けを論理的に整理。技術選定やコスト試算も含めて整合性のある計画を立案。
  3. 提案資料作成(Claude Opus 4.5):経営層向けのプレゼン資料や説明文を作成。読みやすさと説得力が求められるため、Claudeの自然な文章生成能力を活用。
  4. 実装支援・ハンズオン(Claude Opus 4.5 / Sonnet):実際のワークフロー開発やツール導入を支援。柔軟な対応が求められる実装フェーズではClaudeが適している。

このように、コンサルティングの各フェーズで最適なモデルを選ぶことで、論理的な分析と読みやすい資料作成の両立を実現しています。特に、経営層向けの資料では「論理的な整合性」と「読みやすさ」の両方が求められるため、フェーズごとの使い分けが重要になります。

マーケティング・プロダクトマネジメントへの応用

マーケティングやプロダクトマネジメントの領域でも、モデル選定の考え方は同じように適用できます。それぞれのタスクの特性に応じて、最適なモデルを選択することで、効率と品質を両立させています。

マーケティングでの活用例

マーケティングでは、コンテンツの種類や目的によってモデルを使い分けています:

📊 マーケティングタスク別モデル選定

  • 市場分析・競合調査(Gemini 3 Pro):検索能力と論理的分析力が高いGeminiで、ファクトベースの市場分析レポートを作成。データの正確性が重要な場面で活用。
  • コンテンツ戦略立案(Gemini 3 Pro):SEOキーワード分析やコンテンツプランの論理的な設計。整合性のある戦略立案にGeminiの論理的な思考力が有効。
  • ブログ記事・コピーライティング(Claude Opus 4.5 / Sonnet):自然な日本語で読みやすいコンテンツが求められるため、Claudeが最適。ターゲット層に合わせたトーン調整も得意。
  • SNS投稿・キャッチコピー(Claude Sonnet):短い文章でも文脈を理解した自然な表現ができるClaude Sonnetで十分。コスト効率も良い。

プロダクトマネジメントでの活用例

プロダクトマネジメントでは、要件定義からロードマップ策定まで、各フェーズで適切なモデルを選択しています:

📋 プロダクトマネジメントタスク別モデル選定

  • ユーザーリサーチ分析(Gemini 3 Pro):アンケート結果やインタビュー内容を論理的に分析し、インサイトを抽出。データの整合性を重視する分析にGeminiが適している。
  • 要件定義・仕様書作成(Gemini 3 Pro):技術要件や機能仕様を論理的に整理。抜け漏れのない整合性のある仕様書作成にGeminiの論理的思考力が有効。
  • プロダクトロードマップ策定(Gemini 3 Pro):優先順位付けやリリース計画を論理的に設計。技術的制約やリソースを考慮した現実的な計画立案に適している。
  • ユーザーストーリー作成(Claude Opus 4.5):自然な文章でユーザーの視点を表現するストーリー作成にClaudeが最適。共感を生む表現力が求められる場面で活用。
  • ステークホルダー向け資料作成(Claude Opus 4.5):経営層や開発チーム向けの説明資料を作成。読みやすさと説得力が両立できるClaudeの文章生成能力を活用。

このように、マーケティングとプロダクトマネジメントの両方で、タスクの特性に応じたモデル選定が重要になります。論理的な分析や整合性が求められるタスクにはGemini 3 Pro、自然な文章や読みやすさが求められるタスクにはClaude Opus 4.5やSonnetを使い分けることで、それぞれの領域で最適なアウトプットを得られています。

活用領域の例

📊 マーケティング

  • コンテンツ戦略の立案(Gemini 3 Pro)
  • コピーライティング(Claude Opus 4.5 / Sonnet)
  • 市場分析レポート(Gemini 3 Pro)
  • SNS投稿・キャッチコピー(Claude Sonnet)

📋 プロダクトマネジメント

  • 要件定義(Gemini 3 Pro)
  • ロードマップ策定(Gemini 3 Pro)
  • ユーザーリサーチ分析(Gemini 3 Pro)
  • ユーザーストーリー作成(Claude Opus 4.5)

そういった中で、どういうモデルをどのように使うか、どういうふうにプランニングしていくかみたいなところのナレッジが、本ブログの内容になっています。

クライアントワークでのAI活用でも触れていますが、実際のプロジェクトでこれらの知見を活かしています。開発だけでなく、要件定義やコンサルティング、マーケティング、プロダクトマネジメントなど、あらゆる領域でモデル選定の考え方を適用することで、効率と品質を両立させた成果を出せています。

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執筆者

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

2011年新卒で受託開発/自社メディア企業にWebデザイナーとして入社。1年半ほど受託案件のディレクション/デザイン/開発に従事。2012年株式会社サイバーエージェントに転職し、約4年間エンジニアとしてポイントプラットフォーム事業、2つのコミュニティ事業の立ち上げ・運用に従事。同時に個人事業主としてWebサービス/メディアの開発をスタートし、年間3,000万円以上の利益を創出。2017年株式会社overflowを共同創業者・代表取締役CPOとして設立。2つのHR SaaS事業をゼロから立ち上げ、累計1,000社以上の企業、エンジニア/PMなど3万人以上が利用するサービスへと成長させた。現在はAI Nativeの創業者として、AIと人間の共創による新しい価値創造を推進。