AIで株式投資トレードを効率化:LLMを活用した判定システムの実験開始

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

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AIで株式投資トレードを効率化:LLMを活用した判定システムの実験開始

こんにちは。AI Native の田中です。本記事では、AIを活用した株式投資トレードの効率化について、私が実際に取り組んでいる実験的なアプローチをご紹介します。

私自身は、大学時代に4年間、デイトレードやスイングトレードを行っていました。国内株式、日経225先物、為替(FX)など、さまざまな金融商品を取引していた経験があります。社会人になってからは仕事に集中するために株式トレードからは離れていたのですが、2社目の創業を機に、今後のライフスタイルや金融資産のポートフォリオを改めて考える必要が出てきました。

そこで最近、株式投資について改めてインプットを進めていく中で、いくつか思いついたことがありました。本記事は、AI Native代表の田中個人として、それらのアイデアを実験している記録です。

AI・LLM(大規模言語モデル)の進化により、これまでシステムトレードでは難しかった「総合的な判断」が可能になってきました。テクニカル指標だけでなく、心理的側面やファンダメンタルズ、チャートパターンまで含めた統合的な分析をAIに任せることで、トレードの精度を高められるのではないか——そんな仮説のもと、実験を開始しました。

仮説:LLMの総合的な判断能力はトレーダーの壁を越えられるか

AIを活用した株式投資トレードの効率化とは

私がこのプロジェクトに取り組む背景には、デイトレードにおける以下の課題があります。

  • 常時監視の負担:相場に張り付いてレスポンス早くトレードできるかが成果を左右する
  • 感情的判断のリスク:利益確定や損切りのタイミングで人間は感情に左右されやすい
  • 情報処理の限界:複数銘柄を同時に監視し、即座に判断することは人間には難しい
デイトレーダーが直面する3つの壁

これらの課題に対し、LLMの「コンテキストを読んで総合的に判断する能力」を活用できないかと考えました。AIワークフローの構築経験を活かし、トレーディング判定システムの構築に着手しています。

LLMにトレーディング知識を学習させる方法

書籍・YouTube動画からの知識抽出

まず取り組んだのは、株式投資のトレーダーによる書籍やYouTube動画から、トレーディング手法や目利きの方法を体系的に抽出することです。

学習させた知識の例

  • チャートパターン認識(ダブルボトム、三尊天井など)
  • 出来高と価格の関係性分析
  • 移動平均線のクロスシグナル
  • ファンダメンタルズ指標の読み方
  • 市場心理とセンチメント分析
  • エントリー・イグジットのタイミング判断基準

トレーディングパターンの整理と体系化

複数のソースから収集した知識を、LLMが処理しやすい形式に整理しました。具体的には、「このチャートパターンが出たとき、どのような判断をすべきか」というルールベースの知識を体系化しています。

これにより、あらゆるトレーディングパターンを網羅的に整理し、AIが参照できるナレッジベースを構築しました。

ChatGPTやClaudeへの知識インプット

整理した知識は、ChatGPTやClaudeなどのLLMにコンテキストとしてインプットします。自動化の観点から、プロンプトテンプレートを用意し、再現性のある判定が可能な仕組みを構築しました。

AIトレード判定システムの仕組み

AIトレード判定システムの全体像

銘柄・チャート情報のインプット方法

判定システムの基本的な流れは以下の通りです。

  1. 自分で選んだ銘柄の情報をテキストで入力
  2. 現在の株価、出来高、時価総額などの基本情報を提供
  3. 自分の判断(「買い時では?」など)をあわせて入力
  4. AIが学習済みの知識と照合して判定

チャート画像の解析と判定

さらに精度を高めるため、チャートの画像をLLMに貼り付けて判定させることも行っています。現在のLLMはマルチモーダル対応しているため、チャート画像から視覚的なパターンを読み取り、テクニカル分析と組み合わせた判断が可能です。

ポイント:テキスト情報だけでなく、チャート画像も含めて総合判定することで、かなりの精度でトレードのタイミングを見極められるようになってきました。

総合的な売買判断の出力

AIは入力された情報をもとに、以下のような形式で判定結果を返します。

  • 買い・売り・様子見の判断
  • 判断の根拠となったパターンや指標
  • リスク要因の指摘
  • 推奨するエントリーポイント・損切りライン

従来のシステムトレードとの違い

従来のシステムトレード vs LLMによる総合判断

テクニカル指標だけでない総合判断

従来のシステムトレードは、移動平均線やRSI、MACDなどのテクニカル指標を数値的に処理するルールベースのアプローチでした。これに対し、LLMを活用したアプローチでは、複数の要素を「文脈として」理解し、総合的に判断できます。

心理的側面・ファンダメンタルズの考慮

LLMは、市場心理やファンダメンタルズ情報も含めて判断できます。たとえば:

  • 決算発表前後の投資家心理
  • 業界全体のトレンドとの整合性
  • ニュースやイベントが株価に与える影響

これらは従来のシステムトレードでは扱いにくかった要素です。

コンテキスト理解による柔軟な判断

最大の違いは、コンテキストを読んで判断できる点です。同じチャートパターンでも、市場環境やセクターの状況によって解釈は変わります。LLMはこうした文脈を理解した上で、より人間の判断に近い形で分析を行えます。

関連記事: AI Nativeな開発哲学では、AIと人間の協調について詳しく解説しています。

バックテストより実運用を選んだ理由

なぜバックテストより実運用を優先したのか

AIトレードシステムを構築する際、多くの人はまずバックテスト(過去データでのシミュレーション)を行うでしょう。しかし私は、バックテストよりも実運用での検証を優先しました。

実運用を優先する理由

  • 机上と実践の乖離:バックテストで勝てても、実際のトレードでは負けるケースがよくある
  • 心理的要素:実際にお金がかかった状態での判断は、シミュレーションとは異なる
  • 市場環境の変化:過去のパターンが未来に通用する保証はない
  • 即座のフィードバック:実運用なら、結果を見ながらすぐに改善できる

実際に運用を開始してみた結果、初日から利益が出る形となりました。以下は実際のトレードで使用したチャートと実現損益です。

AIトレード判定に使用したチャート1

売買前のチャート

AIトレード判定に使用したチャート2

売買後のチャート

実現損益:5,000円の利益

初回トレードの実現損益

もちろんこれは偶然かもしれませんし、長期的な検証が必要です。しかし、AIによる判定が一定の有効性を持つことは確認できたため、このまま運用を続けていく予定です。

今後の展望:トレード自動化への道

正解データの継続的な学習

今後はトレーディングのアルゴリズムがまとまってきたら、正解データをどんどん学習させていく予定です。成功したトレードのパターン、失敗したトレードの要因を蓄積し、判定精度を継続的に向上させていきます。

ブラウザ操作・画面操作の自動化

現在は楽天証券のマーケットスピードを使用していますが、将来的にはブラウザ自動化の技術を活用し、トレード自体の自動化も視野に入れています。

画面操作をAIで自動化することで、以下のメリットが得られます。

  • 24時間体制での市場監視
  • 人間では不可能なスピードでの注文執行
  • 感情に左右されない機械的な取引(ただし、市場参加者の心理を考慮した上での判断)

24時間稼働するAIトレーダーへ

デイトレーダーのYouTube動画を見ていると、結局は自分が張り付いてレスポンス早くトレードできるかどうかが成果を左右することがわかります。

この点、AIであれば24時間稼働してくれます。アルゴリズム自体が間違っていなければ、人間以上のパフォーマンスを出せる可能性があります。動画データやリアルタイムのチャート情報をどれぐらいの速度で処理し、学習させるか——この最適化が今後の課題です。

AI Native企業としてのファイナンシャル実験

この取り組みは、AI Native企業として新しい領域への挑戦でもあります。

私が見ている範囲では、LLMを使ったこのアプローチでトレードしている人はまだ少ないように感じます。既存のシステムトレードやアルゴリズム取引とは異なる、「AIによる総合判断」という新しいパラダイムでの実験です。

このブログでは、今後も継続的に結果を報告していく予定です。AIがファイナンシャル領域でどのような成果を残せるか——CAIOAIBPOで培ったAI活用のノウハウを、投資の世界でも検証していきます。

ぜひこの記事をシェアいただき、同じような取り組みをしている方との情報交換ができれば嬉しいです。

重要:投資に関する免責事項

本記事の内容は、筆者個人の実験的な取り組みの記録であり、投資助言や投資推奨を目的としたものではありません。

  • 株式投資には元本割れのリスクがあります
  • AIによる判定は100%正確ではなく、損失が発生する可能性があります
  • 本記事で紹介した手法を実践される場合は、すべて自己責任でお願いします
  • 投資判断は、ご自身の財務状況、リスク許容度、投資目的を十分に考慮した上で行ってください
  • 必要に応じて、金融の専門家にご相談ください

筆者および株式会社AI Nativeは、本記事の内容に基づいて行われた投資判断によって生じた損失について、一切の責任を負いません。

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執筆者

田中 慎

田中 慎

CEO / PM / Vibe Coder

2011年新卒で受託開発/自社メディア企業にWebデザイナーとして入社。1年半ほど受託案件のディレクション/デザイン/開発に従事。2012年株式会社サイバーエージェントに転職し、約4年間エンジニアとしてポイントプラットフォーム事業、2つのコミュニティ事業の立ち上げ・運用に従事。同時に個人事業主としてWebサービス/メディアの開発をスタートし、年間3,000万円以上の利益を創出。2017年株式会社overflowを共同創業者・代表取締役CPOとして設立。2つのHR SaaS事業をゼロから立ち上げ、累計1,000社以上の企業、エンジニア/PMなど3万人以上が利用するサービスへと成長させた。現在はAI Nativeの創業者として、AIと人間の共創による新しい価値創造を推進。

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